有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部
ストラテジックリスクユニット パートナー山内達夫様、宮﨑大様インタビュー/経営戦略上のリスクアドバイザリーに特化した同組織の特徴と強みに迫る
有限責任監査法人トーマツ

有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部 ストラテジックリスクユニットは、経営戦略に潜むリスクの対策に加え、全社改革を実行する際のリスクマネジメントや実行後の効果測定まで、クライアントの変革をリスク観点から全面的に貢献することを目的とした組織です。
今回は同ユニットのパートナーの山内達夫様、宮﨑大様より、これまでのご経歴、ユニットの特徴や強み、具体的な案件事例や、同領域のトレンド、求める人物像についてお聞きしました。
リスクアドバイザリー ストラテジックリスクユニット パートナー 山内達夫様、宮﨑大様のご経歴
梅本
まずは、山内様のご経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか。
山内様
私は有限責任監査法人トーマツに新卒で入社し、監査業務や株式公開支援業務に従事したのち、(社)日本証券業協会、(株)ジャスダック証券取引所上場審査部(現:日本取引所自主規制法人)、また2012年からは経済産業省へと計3回外部出向をさせていただきました。そして2014年にリスクアドバイザリー事業本部へ移り、現在は2018年に設立されたストラテジックリスクユニットに在籍しています。
梅本
山内様にとって3度の外部出向はとても貴重な経験だったと思います。その中でよかった点などがあれば教えていただけますか。
山内様
コンサルティング業務をする上で、外部出向で得た経験が非常に役立っています。特に私が出向していた証券取引所や証券業協会、経産省では法律や規制を作る側にいました。実際にコンサルティングをする上で「このルールは私が策定に関与しました」と言うと迫力がありますし、ルールに則ってクライアントにコンサルティング業務を行う際、「このくらいのレベル感で対応しましょう」などの勘所がわかります。
梅本
ありがとうございます。続いて、宮﨑様のご経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか。
宮﨑様
私は前職が信託銀行で、資産運用業務や不動産関連業務に従事していました。その後、2000年に有限責任監査法人トーマツに参画し、IPOクライアントの監査及びIPOコンサルティングの提供のほか、ファンドを含めM&Aの支援なども含めて500件以上のプロジェクトを経験しています。その中で投資のリスクをどう見るか、組織上子会社をどのように管理するか、といった会社の仕組みまで携わるようになり、ストラテジックリスクユニットには2018年より所属しています。
梅本
信託銀行からデロイト トーマツに転職をされた理由を教えていただけますか。
宮﨑様
経営の意思決定に関与する業務に携わりたいと考えたからです。信託銀行では、アドバイザーとして財務の数字を分析しますが、多忙につき、「この数字はどうやって作っているのか」「投資の意思決定はどうやってやるのか」まで深く入り込むことができませんでした。
しかし監査法人では、財務調査(予備調査)やIPO調査の際、単に数字を見るだけではなく数字の裏側で「どんな経営努力をしているか」「どのような仕組みなのか」「ビジネスは成熟しているか」などを見なければなりません。今は、前職よりも実務的でかつ経営者の近くで仕事ができていると感じています。
事業変革によるリターンとリスク予測やBCPに対応、また金融出身者から戦略コンサルなど様々なバックグランドのメンバーで構成
梅本
ありがとうございます。あらためて、ストラテジックリスクユニットの特徴について教えていただけますか。
山内様
ストラテジックリスクユニットでは、CxO目線で重要なリスクを特定し、経営判断を精緻化しながら、ビジネスの成功確率向上につながるアドバイスやコンサルティングサービスを提供しています。 ユニット名にもある通り、主に経営戦略を検討する際の「リスク」を考えます。 具体的には、経営目標が未達となるリスクに対して、「戦略立案に潜むリスク」と「戦略遂行上のリスク」に分けてリスクを特定し、全体的なサポートを行っています。
また、リスクマネジメントは広範囲に及びますが、デロイト トーマツのリスクアドバイザリーのひとつであるGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)ユニットはストラテジックリスクとオペレーショナルリスクの2ユニットにわかれており、ストラテジックリスクでは、事業変革によるリターンとリスク予測や、BCP(自然災害などが発生した場合を想定して企業存続のための事業継続計画)の策定、適切なリスクテイクするためのガバナンス・組織設計などの支援を行っています。
梅本
財務と非財務どちらの領域がメインとなるのでしょうか。
宮﨑様
山内と私は監査法人から来たので財務に強いのですが、ストラテジックリスクユニットでは非財務領域をメインで扱っています。背景としては、クライアントの多くは経営リスクの担当者と、財務担当者が同じではなく、経営と財務とを紐づけてリスクを見ている企業が少ないという事情があります。
財務と非財務領域を一緒に俯瞰して戦略的リスクを見たい、リスクを定量化したい、財務的インパクトを知りたいというケースでは他組織と連携して支援を行っています。
梅本
組織規模やメンバーのバックグランドについても教えていただけますでしょうか。
山内様
デロイト トーマツのリスクアドバイザリーは、リスクアドバイザリー領域においては業界最大級の規模を誇り、メンバーは全体で約2,400名。ストラテジックリスクユニット単体においても約100名になります。なかでもストラテジックリスクユニットは、他ユニットと比べて多彩なバックボーンを持つメンバーがいるのが特徴です。宮﨑や私のような財務出身者のほか、戦略コンサル、事業会社の経営企画、コンプライアンス領域の経験者などさまざまです。
宮﨑様
クライアント目線では、多士済々であることが強みになります。リスクマネジメントでは、属人化させないためフレームワークを重視しますが、それに対しナレッジや経験を持ったメンバーが入ることで、上流工程の提案段階からしっかりとした支援ができます。
また、メンバーにとってはいろいろな強みを持つ人たちが一緒に高め合えるフラットなカルチャーであること。仕事の選択肢を自分で納得しながら選べる仕組みがあること。そういった点が魅力です。
山内様
ユニットが設立されてまだ3~4年という若い組織のため、「やりたいことができない」「発言しにくい」という雰囲気はありません。むしろ「私はこれがやりたい」という想いを持った人が、それを実現するためのユニットだと思います。
リスクマネジメントは裏方的な位置づけから企業経営の根幹へと変化し、カウンターパートもCxOへとシフト
梅本
どのような案件を手掛けているのでしょうか。具体的な事例を教えていただけますと幸いです。
山内様
例えば、グローバルに事業展開しているコングロマリット企業に対して、同社がさらされる地政学リスクやディスプラターの脅威などを抽出しシナリオプランニングなどをご支援しました。
経営課題であった米中対立関係や長期の国家戦略、人口動態の推移、フィンテックの進展などの外部経営環境の変化に対して、未然に備えができずに対応が後手にまわっていたところ、デロイトが蓄積するリスクナレッジをもとに、PEST分析(政治、経済、社会、技術の4つの観点から外部環境を分析)や独自の業界分析を組み合わせたシナリオプランニング手法を用いて、会社へ及ぼし得る具体的な影響の検証を行いました。
宮﨑様
流通業のクライアントに対しては、グループとしての意思決定の最適化のため、決裁権限および意思決定ルートの整理を支援しました。
経営課題として子会社・孫会社が独自に決裁権限表を制定しており、グループとしての最適な意思決定を支える仕組みがなかったため、グループガバナンス全体像として定めるべき事項を整理し、各社に持たせる権限を明らかにした上で、基本的な部分を規定として整備を行いました。
梅本
マーケットの変化が激しく、将来が見通せない世の中だからこそ、企業が考えるべきリスクやテーマが多くなっているのですね。
山内様
例えば、米中貿易摩擦など企業側の努力ではどうしようもできないことがあります。しかし、そういった不確実な経営環境の中でも勝ち残る企業、勝ち残れない企業があるように、将来が見通せない世の中でも経営者は決断することが求められています。
また予想外のリスクが顕在化した場合に、いかに迅速に打ち手を講じるかも経営者の判断であり、これらに対し貢献できるのが我々の付加価値だと思いますね。
宮﨑様
その上、当ユニットが手掛けるコーポレートガバナンスの領域では、説明責任の重さを担っています。昨今、外的な要因により経営環境の変化が早まる中、5年間の中期経営計画で描く予想はほとんど外れてしまいます。それでも、経営者は原因を特定し、ステークホルダーに対して説明責任が求められます。その外圧は非常に高まっています。
梅本
サービス提供の際のカウンターパートはどういった方になりますか。
山内様
私たちは経営戦略に付随するリスクを対象としているので、経営者の方と話す機会は圧倒的に多いですね。
また、私が担当するコーポレートガバナンスの領域では、先ほど宮﨑が申したように外部に対して説明責任が求められるので、経営陣だけでなく、社外を含む取締役の方と直接対峙する機会も多いです。また、グローバルガバナンスとなると、海外子会社の経営陣がカウンターとなることも多いです。
宮﨑様
これまで企業のリスクマネジメントというのは、表舞台よりも裏方的な位置づけでした。しかし最近の傾向として、ERM(Enterprise Risk Management: 全社的リスクマネジメントの仕組み)の導入やガバナンスを強化する動きがある中で、リスクマネジメントが以前よりも企業経営の根幹としての位置づけに変化しています。
典型的な例を挙げると、サステナビリティなどの社会貢献への取り組みにおいては従来企業のCSR部が担っていました。しかし最近では、経営戦略の1つとして戦略企画部が担当していたり、ステークホルダーへの説明をCFOや財務の方が担当したりします。そのためカウンターパートが、CROなどのCxOへとシフトしている印象です。
フォワードルッキングで積極的な「攻めのリスクマネジメント」が求められている
梅本
現在お2人が直面するマーケットのトレンドについてあらためてお伺いしてもよろしいでしょうか。
山内様
経営環境の変化のスピードが速く将来の見通しが難しいなかで、持続的に成長していくためには適切なリスクテイクを伴う経営判断が必要になるため、経営戦略に付随するリスクをマネジメントするという機運は高まっていると思います。また、サステナビリティに対する世の中の動向を踏まえ、より長期の時間軸で機会とリスクを捉えてマネジメントする動きもあります。
例えば、気候変動をはじめとする環境問題や人権問題などサステナビリティに関する取り組みを戦略として掲げる企業が増えており、ストラテジックリスクユニットでも、日本企業に対する同領域の支援が増えています。 この領域では、TCFDなど開示に対するアドバイザリーが従来は多かったのですが、どのように経営に落とし込んで実際の取り組くんでいくのかといったところまで支援すべく新しいサービス開発にも積極的に取り組んでいます。
実際に、他のコンサルティングファームからジョインしたマネジャーは、サステナビリティなど新しい時代に求められる経営戦略に対して策定時だけでなく、実行面まで支援できる点に魅力を感じていると言います。「戦略を経営に実装していく」ことがポイントであり、CxOだけではなく各事業を担う部門長とも膝を突き合わせて最後までお付き合いできる。そういった手触り感がとても面白いようです。
梅本
宮﨑様はいかがでしょうか。
宮﨑様
もともとリスクマネジメントは、内部監査のお手伝いから派生したり、グループ横断でリスクを俯瞰したりすることからスタートするのが主流でした。
最近では意思決定の仕組みを変えたい、意思決定の質を上げたいという局面で我々が貢献するケースが増えています。
例えば、投資や出資、組織変革などのイベントが発生する際に、将来に起こり得るリスクを想定し、フォワードルッキングでリスク情報を届ける。つまり、事前に情報をつかんで届けることがキーになります。
梅本
投資などに付随して先んじてリスク情報を提供していくのですね。そういったテーマのご支援は増えているのでしょうか。
宮﨑様
増えていますね。単に“守り”だけのリスク対策では、リスクマネジメントとして充分ではないという認識が少しずつ広がっています。
フォワードルッキングでリスク管理をするということは、実際に先んじてリスクを取っていく行為です。企業はリターンを求めてリスクを取りにいきますので、成果を取りにいくために事前にリスク情報を届ける。そういった意味では積極的な攻めのリスクマネジメントが増えていると思います。
ストラテジックリスクユニットでは「自分の考えや意見を持っている人」を求めている
梅本
ストラテジックリスクユニットが求める人物像についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
山内様
自分なりの意見を言える人が望ましいですね。特に経営判断には唯一の正解というものがありません。その中でコンサルティングをしますので、私も職位に関わらずチームメンバーからいろいろ意見を聞くようにしています。
唯一の正解がないということは、意見のロジックがしっかりしていれば1つの意見として成立しており、「そういう考えがあるのか」という新たな発見にもつながります。ですから自身の考えを持っている人に期待していますね。
宮﨑様
まったく同じ答えです。自分なりの考えをまとめ、説得できることが大事です。そのため業務に関わらず何か得意分野を持っている人がいいですね。これまで自分が成し遂げたことが1つでもあれば自信にもつながりますし、それを起点に他とは違う発想で物事が考えられる。そういった自分なりの基盤がある方がいいと思います。
梅本
スキル面ではどういった方が採用ターゲットになりますか。
山内様
コンサルティングファームで戦略やリスクに関する支援の経験がある方のほか、業務・IT領域の経験者も求めています。また事業会社で経営戦略の企画・管理、管理会計、財務など経営者の経営判断に必要な情報を提供した経験のある方が主な採用ターゲットとなります。
他にも総合商社出身の方でいえば、海外子会社管理や投資先管理の経験者。金融機関出身の方は、事業統括や法人統括で融資先管理などの経験者。保険会社出身の方は、リスク領域経験者なども候補となります。
またガバナンス・コンプライアンスといった領域では、法務・総務・IR部門の経験者なども親和性があるので、ぜひ積極的に採用していきたいと考えております。
梅本
アサイメントや配属はどのように行っていますか。
宮﨑様
ユニット内でチームにわかれていますが、テーマのクロスアサインは可能です。マネジャー以上はコンピテンシー×セクターで所属を決めて、スタッフクラスはプール所属となります。ユニット全体の考え方として「経営目標が未達となるリスク=ストラテジックリスク」と捉えており、どのチームに在籍していたとしても基本的にすべてのチームでストラテジックリスクに関わることになります。
梅本
ありがとうございます。では最後に、候補者様へメッセージをお願いいたします。
山内様
経営者の方から信頼を得るために、まずは自分なりの意見を持って説明できることが求められます。ストラテジックリスクユニットでは、職位に関係がなく、ご自身がやりたいこと、実現したいことを仕事で発揮できる環境が整っていますので、お待ちしています。
宮﨑様
我々のモチベーションとなるのは、クライアントの経営者や経営管理層の成長局面に対して、アドバイスをしながら一緒に成長していけることです。クライアントと共に困難を乗り越えながら成長したい人はぜひお越しください。

有限責任監査法人トーマツに入社後、監査業務や株式公開支援業務に従事したのち、(社)日本証券業協会、(株)ジャスダック証券取引所上場審査部(現 日本取引所自主規制法人)に出向し、新興市場の上場審査業務に関与。また、2012年より経済産業省経済産業政策局にて産業競争力強化法や、コーポレートガバナンス施策、組織再編税制・連結納税の改正業務に関与。
現在、取締役会・監査役会などコーポレートガバナンス、グループガバナンス、リスクマネジメント体制構築、経営戦略・事業等のリスクなど非財務情報を活用した経営管理体制構築などのコンサルティング業務に従事。
主な共著書として、『コーポレートガバナンスのすべて』(日本実業出版社)、『産業競争力強化法逐条解説』(経済産業調査会)他がある。

前職の信託銀行において、不動産証券化商品の組成、プレースメント、投資助言に関与(主に年金基金に対する不動産及び関連金融商品の投資助言業務等)。また、業務部において部門経営企画及び商品開発等を経験。
有限責任監査法人トーマツ入社後、IPOクライアントの監査及びIPOコンサルティング(予算制度導入、原価計算制度設計等)の提供のほか、国内外のM&Aに対する財務調査、事業価値評価、組織再編支援等の500件超のプロジェクトに関与。
インフラ・資源、通信・出版、不動産、運輸、サービス、飲料・食品、製薬等の業界をカバー。
現所属のリスクアドバイザリー事業本部において、投資判断基準、グローバルガバナンス方針、事業リスクの可視化等の助言業務を提供。

有限責任監査法人トーマツ
有限責任監査法人トーマツは、監査・保証業務とリスクアドバイザリー、それぞれの強みをもったプロフェッショナルが「Quality first」のスローガンのもと価値あるサービスを提供しています。
監査・保証業務では、品質を最も重視した業務遂行により企業の適正な財務報告と内部統制の向上、さらに資本市場の信頼性を担保し、その発展に貢献しています。
リスクアドバイザリーでは、会計、GRC、テクノロジー領域のサービスにより、財務のグローバル競争力強化、経営管理基盤の高度化、IT化の適切な推進等を支援することで、適正な財務報告やガバナンス向上を支え、企業の価値向上と持続的成長を支援します。
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/audit/audit.html
リスクアドバイザリーについて
https://www2.deloitte.com/jp/ja/services/risk-advisory.html
https://rarecruit.tohmatsu.co.jp/careers/

アクシスコンサルティング
アクシスコンサルティングは、コンサル業界に精通した転職エージェント。戦略コンサルやITコンサル。コンサルタントになりたい人や卒業したい人。多数サポートしてきました。信念は、”生涯のキャリアパートナー”。転職のその次まで見据えたキャリアプランをご提案します。
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募集職種 | ストラテジックリスク・コンサルタント |
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職務内容 | ■ストラテジックリスク コンサルティング
等に関するコンサルティング業務 ■カントリーリスク/地政学リスク コンサルティング
等に関するコンサルティング業務 ■クライシスマネジメント(危機管理) コンサルティング
等に関するコンサルティング業務 ■リスクアナリティクス コンサルティング Deloitte Analyticsチームと連携しての、
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